ぴかまく公論 チタン部品への軸肥大加工技術

2010 年 5 月 24 日

高周波熱錬株式会社
西部営業所 井 本 義人

1.はじめに
軸肥大”加工はネツレンが愛媛大学と協同で開発したユニークな塑性加工方法で,Photo 1に示すように,軸部材の中間部に太径部を冷間成形できる.切削加工とは異なり切削粉が出ず,鍛造加工のように排熱,廃油あるいは騒音がなく,省資源・省エネルギーに役立つ環境にやさしい加工方法である.鉄鋼材料を主体にさまざまな金属材料に適用でき,さらに難加工性であるTiや焼結材,ステンレス鋼にも適用できる全く新しい加工法である.

Photo 1 Axial enlarged part by “JIKUHIDAI”process

2.“軸肥大”加工の原理および方法
メカニカルラチェット現象を原理とする加工法で,Fig.1に示すように,一定の軸圧縮力を負荷すると同時に回転曲げによる引張と圧縮の交番応力を繰り返し加え,逐次,軸の一部を肥大させる.
(1)スリーブと呼ばれる金型にワークを挿入し初期つかみ幅の間隔をあける
(2)軸圧縮荷重を負荷しワークを回転させる
(3)片側のスリーブの角度を数°曲げる
(4)スリーブとスリーブの間で肥大が進行する
(5)軸芯を出すためスリーブの曲げ角度を0°に戻す
(6)スリーブからワークを取り出して完成である
Photo 2は“軸肥大”加工装置で,本装置では右スリーブ側が曲げ側となっている.

Fig.1 Schematic illustration of ” JIKUHIDAI” Process


Photo 2 “JIKUHIDAI” Processing machine

3.“軸肥大”加工法の特長
 軸肥大加工の主な特長は以下のとおりである.
(1)材料の大幅な節約が可能
(2)冷間での大変形加工が可能
(3)加工熱の発生が極めて少ない
(4)長尺軸部品の加工も可能
(5)少量・多品種にも対応容易
(6)難加工材の加工も可能
(7)肥大部のニアネットシェイプ化が可能

4.加工範囲
素材径をD0,肥大部の径をD,肥大部の幅をLとして,それぞれの素材径に対する割合を肥大率および肥大幅率と呼ぶとすると,肥大幅率が1.0必要とされる場合,肥大率は約1.6まで加工できる.材質と加工条件によっては肥大率2.5以上まで加工できる.Photo 2に示した設備では素材径はφ20~φ45で素材長さは3,000mmまで,最新の大型設備では,素材径φ80,長さ800mmまで加工可能である.

5.おわりに
 “軸肥大”加工は,メカニカルラチェット現象を活用した従来法とは異なる冷間加工法で,省資源・省エネ・加工時低騒音が特長の環境に優しい新しい加工法である.難加工材にも適用可能で,Ti材への適用事例を紹介した.さらに適用範囲拡大を図りたく,「こんなTi部品等の加工に適用したらどうか?」という対象があれば可否検討したく,ぜひ難題にもチャレンジしたい.Ti材に限らず軸部品加工法に関する発想転換に役立てば幸いである.

  [参考文献]
日経ものづくり 2005年4月号 PP.76-79 日経BP社
川嵜:第271回塑性と加工シンポジウム(2008年12月)
 

ぴかまく公論 軸肥大加工に基づく造型加工

2009 年 10 月 17 日

高周波熱錬株式会社
西部営業所 井本 義人

高周波誘導加熱は、電気加熱である二酸化炭素排出量が少なく環境に優しいこと、および連続処理による効率的な設備稼働が可能です。
高周波誘導加熱による高周波熱処理(焼入れ・焼戻し)は、加熱面では、急速加熱、表面加熱、部分加熱という特徴を持ち、熱処理面では急速+短時間過熱を基本とするため、その前工程(加工・熱処理)の影響を受けやすい。ただ、その影響の状態と前後工程をスルー(一気通貫)に見て、特に加工工程とのコラボレーションを前向きに考えれば、技術・品質面だけでなく、コスト面でもプラス効果が得られる可能性が高いといえます。

 その中で今回は『軸肥大』拡径加工法を紹介します。
愛媛大学との協同で開発した『メカニカルラチェット現象』により、軸物の中間部に太径部を冷間成形できる加工方法です。図1のような基本原理で、軸物を両側からスリーブで挟みこんで回転させながら片方の非固定チャッキング装置を数度傾けて押し込むことによって、軸の中間部に太径部を容易に創成します。

図1 軸肥大加工法の模式図

 同じ太径部を加工する場合、切削加工に比べて切削くずが出ず、温度はほとんど上がらず、比較的短時間で加工できることから、省資源・省エネで環境に優しく、かつ低コストな加工法として注目されています。図2に軸肥大加工事例を紹介します。

                      図2 軸肥大加工事例

ネツレンでは受託加工と試作開発を進めるとともに愛媛大学と協同で、さらなる加工技術開発と対象材料の拡大を目指して研究開発を進めています。

 昨今の大きな景気変動の裏側で、世界的なものづくり体制も動き始めているものと推測します。その変動の中で、日本のものづくり企業がしっかりと生き残っていくには、言うまでもなく「世界をリードする優れた技術力・品質管理力」の維持発展が必要不可となります。これを実現するには、専業メーカーとしては個々の保有技術をさらに熟成発展させるとともに、部品製造工程を一気通貫に見た工程間コラボレーションにも積極的に目を向け総合的な改善改良・開発とコストダウンを目指す必要があると考えます。