生物付着と金属材料
-表面処理技術のフロンティア-
鈴鹿工業高等専門学校材料工学科
兼松秀行
生物付着という言葉を聞かれたことがおありになるでしょうか?川で水遊びをしているとき,川底の石がぬめぬめとしていることにお気づきになられたことでしょう.川まで行かなくても,皆さんの台所やお風呂でも同じようなぬめりが形成されることが多くあります.
これらはバイオフィルムと呼ばれる生物由来の薄膜が材料表面に形成されるためであることがわかっています.海や冷却水系のような水環境中では,材料表面に有機物が吸着していますので,微生物にとっては栄養が濃縮した環境となっています.そのために水中に浮遊している微生物は材料表面に吸着します.これらが多数集まることによって,吸着した細菌は一斉に多糖を排出しぬめりの中に身を置き,栄養を得るのと同時に外敵(流れや大型生物,殺菌剤)から身を守って生き残りを図ります.これがぬめりであり,バイオフィルムなのです.バイオフィルムができますと,より大型の生物が付着していきます.海に行きますとテトラポットや浮かんでいる船などにびっしりとフジツボや蠣のたまごなどが付着しているのをごらんになったことがおありになることでしょう.
問題はこのような生物付着が実は産業にとって,そして環境問題にとって大きな問題となっていることです.
以前には知られていなかったのですが,こうした生物付着によって材料の腐食劣化が直接間接に関わっているその割合は思ったよりも多く,ある算出によると全体の腐食損失の50%ともいわれています.腐食による経済損失が先進国ではGDPの数パーセントであることを考えますと,生物付着の問題は実は大きなビジネスチャンスにつながる可能性があることがおわかりになることでしょう.
この問題は実は材料の表面・界面の問題であり,表面処理が有効な解決策の一つとなることは,ここまで見てまいりますとすでに明らかです.私は全国にいる多くの共同研究者の方々とこの問題の解決に全力を投入しているところでございますが,やはり工学は現場が本流であり,企業の皆様との共同体制が問題解決には不可欠です.産業界の皆様との今後のコラボレーションに期待したいと存じます.








