2010 年 2 月 6 日

ぴかまく公論 油中高周波焼入れの紹介

株式会社ナガト 内田弘之

1.従来の高周波焼入れ
 熱処理において焼入れを行うと変形が発生することは良く知られています.焼入時の変形のバラつきを抑えるためには,製品の必要な部位にのみ必要な機能を付与すること,すなわち焼入範囲を小さくすることが望まれます.高周波焼入れは部分的な熱処理であり,浸炭焼入れなどの全体的な熱処理方法に比べ,熱処理変形の観点からは有利な熱処理方法と言えます.この高周波焼入れにおいて必要な加熱コイルは,大電流を流すため,一般的に銅パイプを使用し,水冷としています.ここで図1のような製品の内径を焼入れする場合を例にとると,加熱コイルは加熱される製品より小さくする必要があり,銅パイプの加工の都合上,処理される内径のサイズには限界があります.加えて,加熱後の焼入冷却においては加熱コイルが存在するため,いわゆる冷却ムラが発生する場合があります.

 
2.液中高周波焼入れ
 高周波焼入れの特徴である部分熱処理を生かしながら,更にその適用範囲を拡大する技術が“液中高周波焼入れ”です.文字どおり,製品と加熱コイルを溶液中に浸漬させて高周波焼入れを行います.溶液中に加熱コイルが存在するためコイルの冷却をあまり考慮する必要はありません.加熱後の焼入冷却も加熱が終わると同時に加熱部周囲の溶液により行われますので,加熱コイルの存在に起因した冷却ムラは軽減されます.加えて,加熱範囲を狭くできるため,熱処理変形も軽減されます.図1は内径スプラインに液中高周波焼入れを行った製品です.製品には2回の焼入を行うことで上下に2条の焼入パターンを形成させていますが,従来の高周波焼入れでは2回目の加熱により最初の硬化層が軟化してしまうため,このような焼入パターンは実現できません.加えて,スプライン全体に硬化層を形成させていないため熱処理変形・バラつきとも小さくなります.
図1.液中高周波焼入れ製品 (内径約φ16)
 
3.油中高周波焼入れ

 高周波焼入れの後工程にはショットブラストや研磨などの酸化スケール除去の工程が付随するため,コスト低減の観点から“無酸化”高周波焼入れのニーズは高いのですが,一般的にアルゴンや窒素といった不活性ガスを使用するため,高コストとなります.特殊な焼入油の中で高周波焼入れを行う油中高周波焼入れでは,加熱中に発生するガス成分を利用し,還元性の雰囲気が形成されるため,大気中での加熱で発生する酸化スケールが見られません.図2は油中高周波焼入れの実例で前述の特徴を利用し,精密転造を行った製品に処理を行うことで,処理前の良好な表面粗さを維持し,後工程の研磨を廃止することを可能としました.

    図2.通常の高周波焼入れと油中高周波焼入れ比較

 

カテゴリー: ぴか☆まく公論 — admin @ 4:09 PM