柿原工業株式会社
新プロセス開発室 王路貴史
(続)環境負荷を低減しためっきプロセス
前回(2009年4月1日)のぴかまく公論で,弊社の環境負荷を低減しためっきプロセスの1つであります『樹脂めっき部品のリサイクル』をご紹介させていただきました。
このプロセスは,めっき完成後の部品について着目し,不要となった樹脂めっき部品のリサイクル回収について取り組んでいる内容でしたが,今回は現在弊社が取り組んでおりますめっきの製造工程に着目した『6価クロムフリープロセス』についてご紹介させていただきます。
樹脂めっきの工程は図1のような工程を経てめっきが行われております。
この工程の中で,『②エッチング』と最終の工程『⑯クロムめっき』はめっき薬品に6価クロムが使用されており,環境負荷の高い処理工程です。めっき薬品メーカーやめっき業者は,この工程に代わる処理薬品や工程の開発を実施しており,弊社もこの開発に取り組ん
でおります。
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図1 樹脂めっき工程
まず,図1-②エッチング工程では,高濃度のクロム酸(6価クロム)と硫酸を使用するため作業環境が悪く,廃液処理も適切に行わなければなりません。
これに代わる工程として,クロム酸を用いないでエッチングが出来るプラスチックを検討したり,UVやオゾン等で樹脂を酸化させたり,湿式めっきではなく乾式めっき(真空蒸着等)で製膜する等の研究発表がなされておりますが,まだ量産化に至ったものはなく,弊社もいろいろな方法について現在も検討を進めております。
次に最終工程(図1-⑯)のクロムめっきですが,こちらもクロム酸のめっき液から金属クロムを析出させる工程です。完成したクロムめっき品の金属皮膜は金属クロムであるためステンレス材(Ni/Cr合金)と全く同じで無害ですが,生産工程としては6価クロムを使用しているため環境負荷の高い工程の1つとして挙げられております。
こちらは既に6価クロムではなく3価クロムめっき浴が開発され,弊社も量産化を行っております。また,スズコバルト合金やスズニッケル合金,金めっきを施せば,6価クロムを使用しない最終工程を達成することも出来ます。
最近,ロシア市場への自動車販売が増えており,日本からも自動車が輸出されつつあります。それにともない,樹脂めっき業界では新たな問題が発生しました。
『ロシアで実際に走行している自動車の「めっき部品が錆びる」』という問題です。いろいろと要因はあるようなのですが,雪が降ったときに道路に撒く『融雪塩』が大きな要因として上げられています。道路に撒いた融雪塩が自動車めっき部品に付着し,付着した状態のまま放置することによって,めっき皮膜を錆びさせているようです。「雪道を走行したあとは,自動車の下周りをしっかり水洗いしておくように。」と言うことを耳にされたことがあるのではないでしょうか?ロシア地域ではこのような事が顕著に起こっているようです。寒冷地のため,水で自動車が洗えない(凍ってしまう)といった事も影響しているようですが・・・。
再現試験として,融雪塩の主成分である塩化カルシウムを樹脂めっき部品に塗布し温度,湿度をかけると著しくめっき(クロムめっき)が腐食します。ここで,3価クロムめっき浴から析出した皮膜は,この塩化カルシウム腐食性が非常に高い事がわかりました。
しかし,現在量産化している3価クロムめっき浴のめっき皮膜は『ダーク調』と言われているちょっと黒っぽい皮膜で耐食性を狙った製品ではなく,デザイン性重視のめっき品でした。そこで,6価クロムめっき浴からのめっき皮膜色調=シルバー調の色調で,耐塩化カルシウム腐食性が高い,3価クロムめっきが要望されるようになっております。
こちらについても弊社は取り組みを行っております。
http://www.kakihara.co.jp/technology/chrome3/index.html
このように弊社では現在,6価クロムを使用しない樹脂めっきプロセスについての研究に力を注いでおり,本年度の『ものづくり中小企業製品開発等支援補助金』の採択を受け,図①~⑨までの全樹脂めっき工程から6価クロムを使用しない工程への開発に励んでおります。