溶射ってご存知ですか?
ぴかまく公論 溶射ってご存知ですか?
2009年6月30日
倉敷ボーリング機工株式会社
田尻さや香
◆ はじめまして ◆.jpg)
梅雨入りしたにもかかわらず、まとまった雨の降る気配のない、晴れの国「岡山」。取水制限を始めた近郊の県の話も他人事とは言えなくなってきました。個人的には、ポリバケツやペットボトルに溜めた水で生活した、十数年前の断水の光景が頭をよぎります。そして、こんな水不足の時に増えるお問い合わせが、「ボーリング」のご依頼です。もちろん社名に「ボーリング」が入っているので、電話帳などで調べて連絡してくださっているとは思うのですが、当社の「ボーリング」は別ものです。当社では、井戸掘りの「ボーリング」ではなく、車のエンジンなどの「ボーリング」加工を行っていた会社です。「行っていた」と過去形なのは、さらにややこしいのですが、現在では、「ボーリング」加工も行っていないのです。
そもそも、1950年代に車のエンジンの燃焼効率を上げるために、エンジンの一部分である、エンジンシリンダの内径を大きくすることを目的として、ボーリング加工を行っていました。平成生まれには想像できない光景かもしれませんが、その当時は自動車が止まることがよくあったとか。申し上げるまでもなく、現代では修理の必要のなくなった車のエンジンシリンダのボーリング。当社でもボーリング技術から派生して機械加工・精密機械加工をベースに、近郊の水島コンビナートの保全・メンテナンス業務へシフトしていきました。そして、壊れた機械部品を元に戻すだけでなく、さらに寿命を長くできないか?という思いで始めたのが、表面処理の1つである「溶射」です。
◆ 「ヨウシャ」って? ◆.jpg)
「ヨウシャ」加工と聞いて、すぐに「溶射」と思い描かれる方はどの位いらっしゃるでしょうか?なかなか日常的に目にする機会がないのか、気付いて貰いにくいところにコーティングしているのか、認知度はまだまだの「溶射」です。その歴史を紐解くと、1909年にスイスのDr. M. U. Schoopが発明した技術で、日本へは1919年に江沢謙二郎氏が導入したと言われています。90年ぐらいの歴史があります。当社では1963年(昭和38年)より導入し、その当時は、摩耗や腐食した大型船舶の軸の寸法復元などをさせて頂いていました。経済産業省から「特定ものづくり基盤技術」として認められたのは2008年(平成20年)になってから。認定は20番目の技術になります。これにより、溶射技術が多様な分野に渡り我が国製造業を支えているという現状とその重要性を認知して頂けたのではないでしょうか。
◆ 溶射の定義 ◆
溶射は分かりやすい例えでは、「アーモンドチョコレートのチョコレート」、「金属のお化粧」です。表面を美味しく美しくするだけでなく、長持ちさせたり性能を向上させたりします。JIS規格では「燃焼または電気エネルギーを用いて溶射材料を加熱し、溶融またはそれに近い状態にした粒子を素地に吹き付けて皮膜を形成することと定義されています。溶接のように高温で金属を溶かして、塗装のように溶滴(溶かした粒子)を吹き付けるイメージでしょうか。①あらゆる材質に皮膜を形成でき、②溶射材料の種類を広範に選択できます。③基材の寸法に制限がなく、また、④皮膜の形成速度が高いという特徴があります。
◆ 溶射のメリット ◆.jpg)
主な材料は金属・合金・セラミックス・プラスチックスです。被対象物は、例えば、金属・合金・セラミックスだけでなく、石膏や有機物(木材、布、紙やプラスチックス)など。回転機の摺動部分であれば、硬い、耐摩耗性に優れた1 mm以下の薄い皮膜を被覆します。硬質物質を含む液体に接触する回転体であれば、硬く、そして、接触溶液である酸・アルカリや海水などでも錆びない、耐摩耗性と耐食性に優れた皮膜を。当社の溶射皮膜は、紙をつくる製紙会社の設備(「抄紙機」と呼ばれます)の主要パートを構成する各種ロールの表面にも、耐摩耗性や耐食性はもちろんのこと、非粘着、離型性、スリップ防止、グリップ力向上、帯電防止などの用途に使われています。
現在では、防食・肉盛溶射等のみならず、ほとんど全ての産業界に何らかの形で使用され、ジェット機から人工歯根まで、ありとあらゆるアプリケーションがあります。高硬度、高強度、耐摩耗、耐食、耐熱、断熱、導電性、絶縁性などの機能性を付与し産業界の技術革新に貢献すべく、21世紀に入り注目を浴びているエネルギーや環境関連への適用も日々増えています。既存製品に拘らず、どんどん新しいテーマでのご用命を承っております。
◆ おわりに ◆
先日、採用関係の会社説明会で受付職をご希望の学生さんがお見えになりました。それは、「ボーリング」ではなく、「ボウリング」場ですよね。そろそろ、社名も変えた方がいいかもしれません。
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